主人公は名たんてい
ビスケットクマの男の子のテオと女の子のモリーはなかよしきょうだい。
モリーは本を読むことが大すきで、本や物語のことならだれよりもよく知っています。
あるとき、テオがモリーに、
「モリーも本を書いてみたら?」
とすすめました。
「それなら、テオをモデルにしてお話を書いてみようかな。」
とモリー。
「え? ぼくでいいの?」
とてれくさそうなテオでしたが、じつは、心の中で(やったー!)と大よろこびでした。
いつもおちついて、おっとりしているテオですが、じつは強くてかっこいい名たんていが、みんなをたすけるハラハラドキドキのお話が大すき。
そんな物語の主人公になってみたかったのです。
テオはさっそく、かつやくにそなえて、木のぼりやジョギングで体をきたえはじめました。
モリーはそんなテオのようすをノートに書いていたのですが……。
学校の帰り道、くるみリスの男の子のラルフが大いそぎでテオのところへやってきました。
「テオ! たすけて!」
こまりきったラルフのようすに、
「よし! まかせて!」
と、はりきったテオ。
「しゅくだいでわからないところがあるから教えて。」
「う、うん、いいよ。」
いつのまにかほかのお友だちもあつまって、みんなでべんきょうタイム。
「ありがとう、テオ。」
みんながテオにおれいを言っているところを、モリーはノートに書きとめました。
次の日、村のみんなで森にピクニックに行くことになりました。
(よし、だれかが森でこまっていたら、ぼくがたすけよう!)
とはりきったテオですが、ピクニックといえば、もうひとつ大事なことが……。
そう。テオは名たんていと同じくらい、おりょうりを作ることと食べることが大すきなのです。
テオはモリーにもてつだってもらってとくいのサンドイッチをたくさん作りました。
ピクニックでは、おいしいサンドイッチにみんな大よろこび。
「いつもありがとう! テオ!」
でも、一番おいしそうにほおばっていたのはテオです。
もちろん、モリーはそんなようすもノートに書いていました。
「かっこよくかつやくするところがぜんぜんなくてごめんね。」
テオのことばに、モリーは、
「みんなのためにいっしょうけんめいな、やさしいテオがいちばん!すてきな本が書けそう。」
とにっこり。
やがて、みんなにたよりにされるかっこいい男の子が主人公の本が、シルバニア村で大人気になりました。