お母さんのまほうの手

(ショコラウサギのお母さん)

ショコラウサギのお母さんテリーはたよれるアイデアマン。
お家のなかの困りごとも、いろいろなひらめきで、解決してくれます。
「お母さん、どうしよう!」
「お母さん、手伝って!」
テリーも、そう言われると、いてもたってもいられなくてがんばりたくなるのです。

ショコラウサギの女の子フレアがひそひその森をさんぽ中に、お気に入りのワンピースを木の枝にひっかけてやぶいてしまったことがありました。
がっかりするフレアに、テリーは
「こうしたらどうかしら?」
お花のアップリケをつけてくれたのです。
「ありがとうお母さん、前よりずっとかわいくなってる!」

ショコラウサギの男の子ココが、テーブルクロスにジュースをこぼして大きなシミをつけてしまった日も、
「ごめんなさい。」
あやまったココにテリーはやさしく言いました。
「私にまかせて。」
テリーがシミのついたテーブルクロスをラベンダーでそめなおすと、きれいなむらさき色に生まれ変わったのです。
子どもたちは、お母さんの手はまほうの手、と言うようになりました。

そんなある日。
ショコラウサギの赤ちゃんクレムがテリーに言いました。
「おねがいがあります~!」
「どうしたの?」
テリーがたずねると、クレムは植木鉢をもってきました。
「だいじにしていたおはなが、かれちゃって……。まほうのてで、もどせますか?」
クレムはお母さんなら何でもできると思っているようです。

このお花はクレムがはじめての遠足でどんぐり山にいったときにとってきたものでした。
「咲いたお花がかれてしまうのは、しかたがないことなのよ。」
テリーの言葉をきいたクレムはしくしくと泣き出してしまいました。
困ってしまったテリー。
「何とかしてあげたいけれど、どうしましょう……」

次の日。テリーは植木鉢のところにクレムをよびました。
「はい、これ、どうぞ。」
「たいへんです!なんと……なにもありません。おはなさんはどこにいってしまったの……。」
するとテリーは言いました。
「クレム、ちょっと手をだして。」
クレムの小さい手のひらに、テリーは黒い小さなつぶをのせました。
「これは、なんですか?」

「あのお花がかれたあとにのこしてくれたタネなの。このタネを土にうえてお世話をすれば、またあのお花がさくわ。」
それを聞いたクレムは大よろこび。
「まいにち、たいせつにおせわします!」
植木鉢にお水をあげながら、いっしょうけんめいお世話をするクレムを見て、早くお花が咲きますように、と楽しみなテリーなのでした。

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