どこでもいっしょのイス
(フェネックファミリー)
フェネックファミリーの小さな赤ちゃん、アリーとカーヤは、さいきん、おすわりがじょうずにできるようになりました。
「ふたりにイスを作ってあげよう。」
とお父さんのロナルドとお母さんのシャロンは大はりきり。
サンドアーティストのお父さんと絵本作家のお母さんはふたりともアイデアマン。
手づくりがとくいなのです。
「アリーはのんびりやさんで、食べるのもゆっくりだから、すわりごこちのいいイスがいいね。」
「カーヤは星を見るのがすきだから、夜のイメージのデザインにしてあげるわ。」
こうしてすてきなイスがふたつできあがったのですが……。
「さあ、ごはんだよ。」
ごはんの時間に新しいイスにすわらせても、アリーはまわりを見ているだけで、いつまでも食べおわりません。
夜にはまどのそばにカーヤのイスをおいて、星を見せてあげようとしたのですが、カーヤはくらがりをこわがって、おちついてイスにすわっていられません。
「これじゃ気に入らないのかな。」
「どんなイスがいいかしら。」
お父さんとお母さんはすっかりこまってしまいました。
ところが、つぎの日。
たまたまアリーとカーヤのイスをくっつけておいてみると、ふたりは顔をみあわせて、にこにこ。カーヤといっしょにアリーも楽しそうにごはんを食べています。
夜もアリーがとなりにいれば、カーヤはくらがりをこわがらずに、星をながめていられました。
それに、いっしょがいいのは、赤ちゃんたちだけではありません。
アリーとカーヤは、お父さんとお母さんが大すき。ふたりがいなくなるとすぐになきだしてしまうほど、いつでもどこでも、いっしょにいたがります。
そこで、アリーとカーヤにぴったりのイスを思いついたお父さんとお母さん。
ふたりはすぐにカーデザイナーのハスキーのヴィンセントにあるものをたのみに行きました。
ふたりのちゅうもんをきいて、「まかせて。さいこうのものを作るよ。」
とヴィンセントもにっこり。
そして、できあがったのはかわいいフェネックの耳がデザインされている、ふたりのりのベビーカー。
赤ちゃんたちは大よろこびで、毎日、おさんぽしたり、絵本をよんでもらったり、お父さんのサンドアートをながめたり。
ベビーカーはいつも家族のまんなかにある、ふたりのお気に入りになりました。