かわいいパン屋さん
(ショコラウサギの赤ちゃん)
ショコラウサギの赤ちゃんのお家は、パン屋さん。
こなをこねたり、オーブンでやいたり、やきたてのパンをきれいにならべたり……そんなお父さんのおしごとが、赤ちゃんは大すきです。
お手つだいをしているショコラウサギの男の子と女の子が、うらやましくてたまりません。
ある日、ショコラウサギの女の子がかごをさげて森のマーケットにおつかいに行きました。
それを見た赤ちゃんは、
(いいな、いいな、おつかい、したいな。)
そう思いながら、同じように小さなかごをさげてお店の中をうろうろ。
すると、お母さんは、
「あら、赤ちゃん、おなかがすいたの?おやつをあげましょうね。」
と、やきたてパンをひとつくれました。
赤ちゃんは、もらったパンをかごにいれて、
「わあい、おつかいにいってきまあす。」
うれしそうにお店を出ぱつしました。
そして、ショコラウサギの女の子と同じようにマーケットまでおつかいにいくつもりだったのですが、いこいの林までくると、赤ちゃんのおなかがグーッ。
(おなか、すいちゃった。)
と、赤ちゃんは、切りかぶにちょこんとこしをおろすと、かごからパンをとりだしました。
と、そのとき、チュン、チュン、と、どこからかかわいい声がきこえてきました。
赤ちゃんがキョロキョロあたりをみまわすと、少しはなれたところから、小鳥がこっちを見ています。
「小鳥さんも、パン、食べたい?」
と、赤ちゃんは、パンをひとかけら、小鳥の近くにそっとなげてあげました。
小鳥はしばらくパンのまわりでチュンチュン鳴いていましたが、やがて小さなくちばしでパンをついばみはじめました。
「わあい、小鳥さんがパン食べた!おいしい?もっとあげるね。」
赤ちゃんがつぎつぎとパンをちぎってあげると、いつのまにか、二羽、三羽とふえてきて、赤ちゃんのまわりは小鳥でいっぱい。
「小鳥さんのパン屋さんになっちゃった。」
赤ちゃんはうれしくてたまりません。
パンがなくなると、
「また明日、もってきてあげるね。」
と、小鳥にバイバイをして、赤ちゃんはお家に帰りました。
よく日も、そのよく日も、赤ちゃんはかごにパンをひとつ入れると、いこいの林にでかけていきました。
赤ちゃんが行くと、まちかねた小鳥たちがあつまってきて、赤ちゃんと小鳥たちはもうすっかりなかよしです。
家族のみんなは、
「赤ちゃんは、いこいの林が大すきなのね。」
と、やさしく見まもっていたのですが……。
そんなことがつづいたある日、赤ちゃんが目をさますと、外はどしゃぶりの雨。
「ああっ、どうしよう。」
こまったように空をみあげる赤ちゃんに、お母さんがやさしく言いました。
「今日はいこいの林に行かないで、お家の中であそびましょうね。」
でも、赤ちゃんはなっとくできません。
「だめ。小鳥さんたちおなかすいちゃうの。」
そういってなき出してしまいました。
そして、
「小鳥さんって、どういうこと?」
と、しくしくなく赤ちゃんから、ショコラウサギくんとショコラウサギちゃんがとぎれとぎれに話をききだして、家族のみんなは、赤ちゃんが毎日いこいの林に通っていた理ゆうを、はじめて知ったのです。
「赤ちゃん、小鳥さんにパンをとどけてあげていたのね。」
と、ショコラウサギちゃん。
「小鳥さん、おなかすいちゃう。雨にぬれちゃう。」
と、心ぱいしつづける赤ちゃんに、ショコラウサギくんは、
「だいじょうぶ。明日までに、なんとかしてあげるよ」
と、やくそくをしてくれました。
さて、よく日は雨も上がり、いいお天気。
「小鳥さん、まってるかな?」
ショコラウサギくんたちといっしょにいこいの林にやってきた赤ちゃんは、木立ちの中を見て、
「わあ!」
と、うれしそうな声をあげました。
林の木のえだには、かわいい手作りの鳥の巣箱がいくつもかけてあります。
これは、きのうの夜、ショコラウサギくんとショコラウサギちゃんがおそくまでかかって作ったもの。
そして、朝早くここにきて、つけておいてくれたのです。
「小鳥さんたちの、おうち!」
赤ちゃんが見上げると、
「チュン、チュン。」
と小鳥たちが、巣箱のまどから顔をだしました。
「よかった、小鳥さんたちも新しいお家が気に入ったみたいだね。」
「赤ちゃん、これからも小鳥さんたちのパン屋さんになってあげてね。」
と、ショコラウサギちゃんとショコラウサギくん。
「うん!ありがとう、おにいちゃん、おねえちゃん。」
赤ちゃんがパンをまくと、小鳥たちがあつまってきました。
小鳥が赤ちゃんのかたにとまって、赤ちゃんは大よろこび。
それから、赤ちゃんのかわいいパン屋さんは、シルバニア村でも大ひょうばんになりました。