ともだちの木
(くるみリスの男の子)
くるみリスの男の子は、いつも元気いっぱい。
天気がいい日には、一日中、野原や森をかけまわっています。
外でやることなら何でもとくいで、魚つりをすれば、たちまちバケツが魚でいっぱいになるし、どんぐり山で一番たくさんみをつける木がどこにあるか知っているのも、くるみリスくんでした。
キツネの女の子がかぜで学校を休んだ時には、ひそひその森のおくにさいているめずらしい花をつんできて、そっとキツネちゃんの家のドアの前においておきました。
そのくせ、元気になったキツネちゃんに、
「きれいなお花をどうもありがとう。うれしくてかぜがなおっちゃった。」
と、おれいを言われても、
「え?何のこと?ぼくは知らないなあ。」
なんて、まっ赤になってとぼけている、てれやの男の子なのです。
そんなくるみリスくんがとくにすきなのが、木のぼり。
くるみリスくんをさがしたい時は、森や林で
「くるみリスくーん。」
とよべば、高い木のえだの間からかならず、
「なあに?」
と、へんじがかえってくるほどです。
そして、村中の木の中でも、くるみリスくんが一番すきなのは、どんぐり山のちょう上に立つ大きなかしの木でした。
そのかしの木は、ほかのどの木よりもどうどうとえだを広げていて、木のてっぺんから遠くの空や山を見わたすのは、とってもいい気分です。
えだからえだへとびうつってあそんだり、太いえだの上で、お昼ねをしたり。
それに、うれしいことやかなしいことがあった時、くるみリスくんは木に話しかけます。
すると、さやさやと木のはが風でゆれて、まるで木がへんじをしてくれているみたいな気がするのです。
かしの木は、くるみリスくんの親友でした。ところが、あるあらしの夜、たいへんなことがおこりました。
かしの木にカミナリがおちたのです。
あらしがさった後、ボロボロになってたおれているかしの木を見て、くるみリスくんは声をあげてないてしまいました。
友だちみんなでどんなになぐさめても、ぜんぜんえ顔を見せてくれません。
その日から、くるみリスくんはぷっつりと木のぼりをやめてしまいました。
それどころか、どんぐり山にも行かなくなって、天気のいい日に、友だちがさそいに来ても、外であそぼうともしません。
そんなくるみリスくんが、心ぱいでたまらない子どもたち。
「なんとかくるみリスくんに元気になってもらいたいね。」
と、みんなでそうだんして、ひとつの計画を立てました。
そして、何日かたったある日。
「くるみリスくんにどうしても見せたいものがあるの。」
と、子どもたちは、しぶるくるみリスくんを、どんぐり山につれて行ったのです。
ちょう上に来た時、
「ほら、見て、くるみリスくん。」
みんながゆびをさしたところに生えていたのは、ほんの小さなかしのなえ木。
それは、子どもたちがくるみリスくんのためにさがしてきて、うえてくれたものでした。
「いつかこの木も、くるみリスくんの大すきだったかしの木みたいに大きくなるよ。」
と、子どもたち。
ところが、くるみリスくんはたおれてしまったかしの木がわすれられません。
「ぼくはほかのかしの木なんて、いらない。」
と、ありがとうも言わずに、家に帰ってしまいました。
でも、
(みんなは、せっかくぼくのために、小さなかしの木をうえてくれたのに……。)
大切な友だちをがっかりさせてしまったと思うと、くるみリスくんの心は後かいでいっぱいです。
(明日、みんなにあやまって、おれいを言おう。)
と、けっ心した時、きゅうに空がくもって、強い雨がふりだしました。
(小さなかしの木は、だいじょうぶかな?)
そう思うと、いてもたってもいられません。くるみリスくんはカサをさして、どんぐり山へとかけだしました。
ちょう上につくと、小さなかしの木は、雨にうたれながらしっかりと立っています。
くるみリスくんは小さなかしの木にカサをさしかけると、やさしく話しかけました。
「がんばって。大きくなるまでずっと見まもっているから、友だちになろうね。」
「くるみリスくーん。」
そこに、ほかの子どもたちもやって来ました。
みんな小さなかしの木が心ぱいで、ようすを見に来たのです。
「ぼくに新しい友だちをくれて、どうもありがとう。」
くるみリスくんは、ちょっぴりてれながら、みんなにおれいを言いました。
ひさしぶりにくるみリスくんのえ顔をみて、みんなも大よろこびです。
それから、くるみリスくんはもとどおり、毎日元気いっぱい走りまわって、村中の木にのぼっています。
でも、くるみリスくんが一番すきなのは小さなかしの木。
いつかこのかしの木にのぼるのが、くるみリスくんのゆめなのです。